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<第3版と比較>ダニエルズのランニング・フォーミュラ第4版

 

ダニエルズのランニング・フォーミュラ第4版が発売されたので購入した。理論的なペース設定、メニュー構築の方法が解説されており、定評のある1冊。第2版、第3版も繰り返し読んでおり、ランニングの練習方法として一番参考にしている。

レースペースに基づく計算上のVO2MAXであるVDOTを元にしたトレーニングペースの設定に特徴がある。基本的な内容は様々なウェブサイトで解説されているので、今回は第3版からの変更点についてレビューする。

章構成と全体的な違いについて

第4版の目次は以下。

第3版からは章構成に違いがあるが、完全に新しく追加された内容は、ウルトラトレイルとトライアスロンの章である。

日本語訳は全てが新しく翻訳しなおされており、少し読みやすくなった気がする。内容的には既存の章には、ほとんど変更がない。部分的に記載が見直された箇所は、いくつかあるようである。練習メニューの例も第3版と全く同じものが記載されている。

ウルトラトレイルとトライアスロンについて(追加)

ウルトラトレイルに関する章は、ダニエルズ氏の教え子であるマグダレナ・レヴィ・ブーレ(Magdalena Lewy-Boulet)選手のインタビュー記事だ。6ページの記事で、ロング走のほか、200mのレペティション(R)や閾値走(T)もしているといった内容である。一般的なインタビュー記事で、やや期待外れと言わざるを得ない。

トライアスロンについては、簡単なトレーニングスケジュールが記載されているが、合計4ページのみの記載である。

15㎞から30㎞までのトレーニング(変更)

既存の章で大きく内容が変わったのは、「15㎞から30㎞までのトレーニング」だ。第3版では「ハーフマラソンのトレーニング」という章タイトルで4~6週間ごとにレペティション(R)、インターバル(I)、閾値走(T)とポイント練習の重点を変えていく、フェーズトレーニングが紹介されていた。第4版ではフェーズトレーニングについての記載がなくなり、エイリアン・トレーニングという非常にシンプルな練習メニューのみが紹介されている。

エイリアントレーニングとは、週3回のポイント練習を設定し、ロング走(L)→閾値走(T)→レペティション(R)の順でポイント練習を行う週とマラソンペース走(M)→閾値走(T)→インターバル走(I)の順でポイント練習を行う週を交互に繰り返すというものだ。

エイリアントレーニングはシンプルで分かりやすいが、フェーズトレーニングについての解説が省略されたことは残念だ。第3版にはハーフマラソンの特徴についても記載されていたが、第4版では削除されている。

記載が省略された理由は不明だが、追加された章とのバランスで総ページ数が増えないように削除されたのではないだろうか。ハーフマラソン以上の練習に関しては、フェーズトレーニングの効果が薄いという考えもあるのかもしれない。

ちなみに、マラソンのトレーニングに関しては、以前からフェーズトレーニングについての記載がない。マラソンに関しては明確にフェーズが分かれておらず、閾値走やマラソンペース走が常にトレーニングの中心であり、インターバルと同じ日にレペティションを行うというようなメニューになっている。

まとめ

名著であることは間違いなく、本気で速くなりたいランナーには、おすすめの一冊である。VDOTに基づくペース設定や練習メニューの解説は理論的で納得感がある。一方で、マラソンの練習メニューとしては、メニュー例の距離やペースが複雑で、マイル(1.6km)に基づく距離設定となっている点も、やや分かりにくい。自分なりに練習メニューを簡略化するなどして取り組んでいく方が良さそう。

第3版からの改訂という点では、上述のとおり、ほとんど違いがなく、第3版を持っている人は買う必要がないだろう。著者のジャック・ダニエルズ氏は御年89歳とのことなので、今後の大幅な改訂というのは難しいだろう。

余談だが、第4版の表紙は2020年ロンドンマラソンのサラ・ホール選手だ。アシックスのサポート選手のため、メタスピードスカイのプロトタイプモデルを履いている。アシックス愛用者としては、ちょっと嬉しい。