『良いトレーニング、無駄なトレーニング』
- 作者: アレックス・ハッチンソン,児島修
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2012/02/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『良いトレーニング、無駄なトレーニング』という翻訳書を読んだ。原題は「Which Comes First, Cardio or Weights? : Fitness Myths, Training Truths, and Other Surprising Discoveries from the Science of Exercise」だ。トレーニングに関する様々なトピックについて、学術研究に基づいた解説がされている。原著の発行から3年経っていることもあって、既に知っていることも多かったが、興味深いトピックもいくつかあって楽しめた。もっとも印象に残ったのは、フォームを意識するとランニングエコノミーが低下するという研究結果だ。
2005年のコロラド州立大学によるポーズメソッドの研究でも、8人の被験者に12週間のメソッドの講習をおこなったところ、上下動が少なく、短い歩幅の走法を習得できることが明らかになりました。ただし被験者のランニング効率(特定のスピードにおける酸素の消費量)は、ランニング後に平均で8パーセントも悪化していることがわかりました。(140頁)
意識してランニングフォームを変えることはできるが、より効率的なフォームを習得したつもりでも、元々のフォームに比べてランニングエコノミーが低下してしまうことがあるようだ。また、2009年のドイツの研究では、フォーム・呼吸・周囲の状況のそれぞれに意識を向けてランニングを行なう場合を比較した結果、フォームや呼吸を意識したランナーの方が、ランニングエコノミーが悪かったという。*1
おそらく、フォームや呼吸を意識すると無駄な力み(りきみ)が生じてしまい、リラックスして自然なフォームで走る場合よりもエネルギーを消費してしまうのだろう。しかし、意識してフォームの改善を試みることが無意味ということではない。リラックスした状態(フォームに対して無意識な状態)でも、理想のフォームで走れるように努力することで、より効率的な走りを身につけられる可能性はあるはずだ。
マラソンの著名な指導者でも、意識的なフォームの改善に熱心な人もいれば、フォームは意識しない方がいいという人もいる。前述のポーズメソッドの提唱者ロマノフ博士は、前者の代表的な人物だ。一方、高橋尚子などを指導した小出義雄監督は、「走りこんでいるうちに自然とフォームはよくなるから、素人は特にフォームから入ったらダメ。マイフォームが一番だよ」と後者の立場だ。*2
今の自分は、自然な自己流のフォームのままでいいかなと思いながらも、意識して効率的なフォームを練習した方がいいのではないかという気持ち捨てきれずにいる。理想的なフォームの探求は困難だ。